広瀬愛菜「21」

広瀬愛菜さんのニューアルバム「21」やっと受取。クラウドファウンディングの特典付き、オフィシャルリリースより早くゲット。

原田知世の「天国に一番近い島」カヴァーなど、相変わらず透明感ある愛菜さんのヴォーカルを活かしたアイドルポップスものでとてもよき。特に長谷泰宏作「女王陛下かく語りき」はその路線の極めつけみたいな感じでグッとくるハイライトトラックかと思いました。

方でポイントになってるのはMCあんにゅ、ルカタマをフィーチャーした「LA BLUE」、そしてイントロでパトリース・ラッシェンかな?と思わずにいられない「LET US GO」!プロデュースも関美彦氏。前作もスルメアルバムでしたけど今回もそんな感じでしょうか。

曽我部恵一作「サマービート」で終わるのがなんか(あの曲調だからこそ逆に)終わらないでくれこの季節よ、と思って切なくなってしまうところもありつつまたリピートしてしまうのでした。敬称略。

AINA HIROSE / 21

田野大輔「ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか」

田野大輔著「ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか」(大月書店)読了。

『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』共著でおなじみの歴史社会学者、田野先生による、いわゆるファシズムを体験する大学の実践授業についての本。

ベースにあるのは1967年にアメリカの高校で実際に行われたいわゆる「サードウェイブ実験」。ドイツ人がナチス政権の政策をどのように受け入れていったのかを体験する授業であろう。どういう条件下だと集団はファシズムに没頭していくのかを実践させていくもので、教師が「指導者」となり生徒たちに忠誠を誓わせる行動をさせる、制服やロゴを使用するなどで均一化した集団を作ることなどで規律・規範への従属化は進んでいく。

加えてこちらの授業では、教師の監視のもとで「実際に暴走させてみる」。サクラとして仕込んだカップルに「リア充、爆発しろ!」と罵声を浴びせさせる。最初はためらいながらも、教師が指示することで次第にその熱は帯びていく。権力のお墨付きがあることでファシズム的な様相は次第に拡張していく。頭ではわかっていながらカタルシスを覚える生徒たち。そして彼ら自身にそれを検証・考察させることなどを経て、その危険性も回避するなどいろいろ試行錯誤されているのがうかがえる。

普通の人も、権力のお墨付きがあれば個人の責任感から逃れて「権力者の道具」と自ら進んでなっていくというのは、ミルグラム実験スタンフォード監獄実験でもあきらかである(個人的には事前に映画「THE WAVE」やそれらを題材にした映画を見てたので比較的すんなり読み進められた)。参加する人々が同質であることの帰属意識が一体感と独特の高揚感を生み出す。それらが権力と結びついたとき、人というのはいとも容易く「エスカレート」してしまうものなのだということが見えてくる。

本書でもヘイトスピーチに触れられているが、ナチスドイツがユダヤ人をスケープゴートにしたように、異なるものへの義憤や排除感情を煽ることもファシズムの典型なのであろう。異質なものに対する攻撃は均一化した集団から外れたものへの無理解であり、「彼らが自分らの権利を横取りしているのではないか」」という義憤(誤った正義感)であり。それらが直接的あるいは間接的にでも「権力がお墨付きを与える」ことによってエスカレートしていく。日本における在特会からアイヌ問題、埼玉のクルド人などヘイトの構図はみんな一緒なんだろう。政治がそれを黙認することは、まさにお墨付きを与えていることにほかならない。ファシズムは歴史の教材ではなくまさに目の前にあるものなのだという気がする。

ファシズムについて、ナチスのゲシュタポなどを持ち出すまでもなく、別に恐怖政治というだけではなくて「自発的にそこに与する人々」が下支えしたものであるというのは先の戦争での我が国でも一緒だと思うが、「ファシズムへの警鐘」が語られるとき、権力者の側だけに注目してしまい我々自身がどうあるべきかの意識が抜け落ちてるケースもあるので、そういう部分にも警鐘を鳴らした著作なのかもしれないなあと思いました。ファシズムを形成するのは他ならぬ我々自身なのだということで。

アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発

アマプラで「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」を鑑賞。

アメリカの社会心理学者スタンレー・ミルグラムを描いたもの。 やはりメインになるのはアイヒマン・テストと呼ばれる服従実験。 平凡な一市民でも、一定の条件下であれば人は残酷になりうるということを示したもの。 被験者の65%がそうだったというが、果たして自分は残りの35%になれるだろうか。

なんとなく聞いたことのあったスモール・ワールド現象(6人辿っていけば世界と繋がる的な)の実験もしてたんだねミルグラム博士。

服従の心理 (河出文庫) もそのうち読みたい。

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